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ZUN/IKD对谈

来自THBWiki
< ZUN
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  • 本文是2024年12月25日电FamiNicoGamer刊载的ZUN与CAVE社长IDK的对谈。参与者还有ビートまりお和齐藤大地。
  • 原文地址:电FamiNicoGamer东方我乐多丛志
  • 翻译:


かつて弾幕STGは “邪道”だった。ケイブ・IKD氏と『東方Project』ZUN氏が、STGに弾幕を張った歴史を(ビートまりおに脇からツッコまれつつ)語り合う
ケイブ・IKD氏×ZUN氏 1万5千字超クロスインタビュー
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敵の膨大な弾が画面を覆いつくす。一目しただけで生き残れると思えない。だが、よく見るとぎりぎりで弾をすり抜られそうだ。ウソだろ? まさか生き残る道があるっていうのか?
弾幕シューティング(以下、弾幕STG)とは、そんな風に即死しか予感させない弾の嵐の中を生き延びることを魅力としたジャンルである。そんなジャンルを多くの人に広めた、ふたりの巨人がいる。
ひとりはIKDこと、池田恒基氏である。ケイブのクリエイターとして『怒首領蜂』『ケツイ ~絆地獄たち~』など、数々の弾幕STGのクラシックを生み出し、このジャンルを定義したひとりだ。
もうひとりはZUN氏である。ご存じ『東方Project』(以下、東方)博麗神主であり「東方」の世界観を生み出したイメージは強い。だが彼の根底にあるのはハードなSTGゲーマーであり、『東方紅魔郷』などのSTGで同人シーンに強大な弾幕を張ってきた。
IKD氏とZUN氏──同じ時代を生きながらも、ファンが二分されていた時期もあったゆえか、これまで公式な対談は実現してこなかった。そんなふたりが今年、ついに相まみえる。そこで語られる弾幕STGとは──ってあれ? なんかおふたりの間を割り込んで誰か来たんだけど!?
「ちょっと待ってくださいよ!」あれ? あなたはビートまりおさん?なぜここに? 弾幕STG史的に猪木vs馬場(『グラップラー刃牙』ファン向けなら猪狩vs斗場)ばりの対談をこれからやるんですけども?
「僕もこのふたりに言いたいことがあるんですよ!」なんと弾幕STGファンでもあるビートまりお氏が飛び入りし、対談は混沌としていくのであった。
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▲左から池田恒基氏、ビートまりお氏、ZUN氏
聞き手/斉藤大地
文/葛西祝
編集/西河紅葉
写真/まろん
協力/電ファミニコゲーマー


「えっ? 弾が多くて何が面白いの?」昔、弾幕STGというアイデアは疎まれていた

「えっ? 弾が多くて何が面白いの?」昔、弾幕STGというアイデアは疎まれていた
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ビートまりお氏(以下、まりお)
歴史的な対談の実現に乾杯!
池田恒基氏(以下、IKD)
(ジョッキを掲げて)よろしくお願いします!
まりお
よろしくお願いしまーす!
ZUN氏(以下、ZUN)
僕はちょっと一口つけました(笑)。
——
ちょっとZUNさん! ……まずは、すごく素朴な話を聞くんですけど弾幕STGって何なんですか?
IKD
(ビールを飲みながら)何なんですかって?(笑)。
ZUN
(笑ってビールを飲む)
——
「弾が多い!」ってことなんですか? 初期の弾幕STGって、どこから始まったんだろう? というのをおふたりからお聞きしたいんですよね。
IKD
私の印象としては、やっぱり1996年の『バトルガレッガ』が発端ですね。
私は東亜プランに在籍していた時代から、『バトルガレッガ』みたいに弾の多いゲームが作りたかったんです。
でも先輩方から…「こんな弾ばっかり多いゲームが何が楽しいの?」みたいなことを遠回しにも言われてました。(笑)。
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▲『バトルガレッガ Rev.2016』(画像はバトルガレッガ Rev.2016より)
ZUN
あの頃は弾幕って、かなり亜流に思われていたんでしょうね。
IKD
そうですね……。
ZUN
当時のSTGからしたら、邪道だったっていう。
——
思い出してみれば、『バトルガレッガ』以前のシューティングの弾は落ち着いた量でしたね。
IKD
はい。たとえば昔の東亜プランSTGって、画面内に出る球数が16発とか32発とかそれくらいなんですよ。
ZUN
おそらく昔はハードの制約があって、そもそも弾はそんなに出せなかったのもありますね。
IKD
でも「私が作りたいゲームはそうじゃない!」っていうのがあったんです。
——
それが弾幕だったと。
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IKD
そんなSTGに、そもそも「需要があるのは私だけかもしれない」ってこともありました。
先輩方に「それは楽しいの?」と言われていました。当時、弾幕STGはやっていいのか、やるべきかどうなのか、ずっと悶々としてた頃があったんです。
当時聞いた意見では「そんな誰が楽しいの? たくさんの弾を出して避けられるわけないだろ!」って、みんなが怒るっていう。
仮にそういうゲームを作ろうとしたとき、「誰向けなの? 超マニア向けのゲームを作りたいわけ?」って言われるのも想像できちゃうわけですよ。
けれど、それを切り開いたのが『バトルガレッガ』です。「やっていいんじゃん!」と思いましたね。
——
ZUNさんは当時『バトルガレッガ』をプレイしてどうでした?
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ZUN
目が覚めましたよ。「やっていいんだ」って(爆笑)。
まりお
ダハハハハハハハ!
ZUN
「本当にこんなの出していいんだ!」って(笑)。今考えると、ちょっとゲームバランス的にはすごく難しいゲームですけど。
——
『バトルガレッガ』はプレイヤーのゲームプレイによって難易度が変動する「ランク制」というシステムが実装されてましたしね。
ZUN
そう。あんまりショット打っちゃいけないとか、わざと死んだりしてランクを下げなきゃいけないんです。
けっこう面倒くさいゲームなんですけど、弾がたくさん出てること自体が衝撃的でしたよね。その前にも弾がけっこう出てるSTGはあったんですけど、『バトルガレッガ』ではもう、それが売りみたいな。
——
当時、弾幕を出すことのためらいっていうのは、技術上の制約以外に何があったんですかね?
ZUN
これは僕が当時まだゲームを作ってないので、プレイヤーとしての意見ですよ。
STGの世界観って、SFだったり戦争ものだったりすると、弾幕STGみたいに弾がたくさん出ることって……リアリティ、ないじゃないですか(笑)。たぶん、そういう美的感覚なんじゃないかなと思ってますけど。
——
あの頃の弾幕って、STGの世界そのものを破壊しかねないようなものだったんですね。
IKD
ただ、私は超マニア向けのゲームを作りたいわけではないんですよ。なんですけど、みんなドン引きですよ。「誰がゲームセンターに100円を払ってくれるの?」って。開発力をかけて作った挙句、ロケテで誰もお金を払わないという事態を恐れるわけですよね。
そこで『バトルガレッガ』が出て、空気が変わったっていうことだと思うんです。
ZUN
プレイヤーの感覚では、戦闘機や戦車が砲台が弾を円形に撃ったらおかしいわけですよ。それがね、『バトルガレッガ』は平気でやっている。「いいんだ」と。そこが衝撃的でしたね。
——
お話を聞くと、歴史の転換点なんだなと感じますね。
ZUN
弾幕STGって、どちらかというと「自機が敵を撃つこと」がメインだったことから、「弾を避けること」がメインのSTGに変わっていったということだと思います。
だからSTGと弾幕STGは別のゲームなんです。新しいジャンルが生まれたなっていう瞬間です。
——
その新しいジャンルを池田さんは作りたかったと。
IKD
『バトルガレッガ』は人を選ぶゲームでしたが、支持する人は熱狂的に支持してたんですね。なので、「弾幕、いけるんじゃないか?」っていう。
それで本格的にやろうと思ったのが『怒首領蜂』ですね。
——
『怒首領蜂』の稼働が『バトルガレッガ』の翌年、1997年ですよね。あの頃のゲーム制作は早いですね。
IKD
そうですね。『怒首領蜂』を作り始めてる頃は、あそこまでの弾幕にするかどうかっていうのは決めてはいなかったんです。でも、「やってもいいんじゃないか」と思い始めて。
まりお
俺、その前作の『首領蜂』もやってたんですけど、けっこう弾を乱雑にばらまいてるイメージがあって。
『怒首領蜂』から明確に幾何学模様的な美しさを感じたんです。この辺でなんかバリッと変わったなっていう印象があるんですよ。
IKD
『首領蜂』はなんて言うんですかね……「東亜プランっぽいゲームを作れ」ってオーダーだったので、私なりの解釈で作ってたんですね。
私の色を入れると、「これ東亜プランのゲームじゃないよ」って怒られるわけで(笑)。
まりお
ダハハハハハハハ!
IKD
「東亜プランならボス戦ではヘリ出てくるでしょ!」とか言われるわけですよ(苦笑)。で、私はボス戦でザコが出てくるゲームがあまり好きじゃなくて。邪魔されてるみたいだから。
当時は「東亜プランっぽくやんなきゃいけない。自分としてこうゲーム作んなきゃいけない」って謎の狭間でどっちつかずっていう感じですね。
——
『怒首領蜂』を稼働してからの反応ってどうでした?
IKD
思っていた以上に支持していただいた印象がありましたね。当時。
ZUN
僕もしばらくSTGから離れて、格ゲーばっかり遊んでいた時期もありましたけど、格ゲーがマンネリ化してきたときに、またSTGが面白くなってきたのでやってました。
ちょうど『怒首領蜂』が出てきたのもその頃ですね。そこからずっとSTGをやってます(笑)。
——
90年代末には『エスプレイド』『ギガウイング』『サイヴァリア』が稼働し、弾幕STGがブームになったと認識しています。が、実際のところ、シューターにとってそれらの反応はどうだったんですか?
ZUN
う~ん……(苦笑)。STGを遊んでる人の中では好きだったりするし、本当のシューターは嫌ってたりもしていたんですね。
IKD
ですね~……(しみじみと)。
——
賛否が分かれていたと。
ZUN
すごい難しいタイミングですね。古くからのSTGが好きな人は「あれはSTGじゃない!」って、ずっと怒ってる。たぶん、今でも(笑)。
——
「弾幕STGがSTGというジャンルを廃らせた」みたいなことって……。
ZUN
「ダメにした」ってよく言われる。
IKD
相当言われましたね。本当に。
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ZUN
でも弾幕STGがなかったら、STGはどうなっているんだろうなとは思いますね。
IKD
『怒首領蜂』が出たときはそこまで言われていないですけど、他社さんもこう含めて弾幕STGのラインナップが増えてくると「なんだこれ」って意見が出始めるんです。
ZUN
そういう時に、古き良きっぽいSTGを出すメーカーもいるんですけども……。
——
もう、弾幕の時代の流れは変えられないという。IKDさんは他社が弾幕STGを出し始めた時、ライバル心などありましたか。
IKD
ありましたね。他社さんのロケテストには「どういうのを作ってんだろう」と行ってました。STG業界はそんなに広くはなく、全員ライバルなのでよくチェックしには行ってましたね。
まりお
「これやられた!」みたいなSTGはありました?
IKD
いちばん最初に思ったのはやっぱり『サイヴァリア』ですかね。
ZUN
あれは弾がたくさん出てるとわかりやすく楽になるからね【※】
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※『サイヴァリア』では「BUZZ」という、自機が一定回数、敵弾をかすると無敵時間を得られるシステムがある(画像はSteam:Psyvariar Deltaより)
まりお
いまでこそ「バズる」ってインターネットの言葉になっちゃったけど、『サイヴァリア』で無敵になることを「BUZZる」って言葉だったんで。懐かしいな~。
——
弾幕に対していろんな解釈のゲームデザインが出てきたころなんですね。
ZUN
「弾をどう見せるのか?」ですよね。システムに組み込んだり、得点にしたり。
——
2001年に稼働した『斑鳩』はどうでした?
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▲『斑鳩』(画像はSteam:Ikarugaより)
IKD
ちょうど『怒首領蜂 大往生』(以下、大往生)を作っていたところでした。「もうこんなの出たら、ゲーム出せないじゃん!」と思ってました。
『斑鳩』は今でも相当尖ってると思います。敵弾に対して無敵になれる要素を任意に切り替え、乗り越えていくゲームって、過去にもいっぱい提案されたけど、棄却されてるはずなんですよ。私も何度も社内で何度も見ました。
——
敵弾に対して無敵化や吸収のアイディアって、現場でたくさん出ていたんですね。
IKD
『斑鳩』は要素をめちゃくちゃ絞って作っているので、ゲームになってるじゃないですか。そこがすごいなって思いました。グラフィックもすごいなと思いましたし。
ZUN
『斑鳩』はあのアートワーク自体がその白黒と一体化してて、すごく出来がいいんです。白と黒だけにして、その世界観がちゃんと合うようなイメージしてるから。でもあのゲームはね、弾幕STGではないですね。
まりお
ひとつのSTGの完成形だと思ってますね。弾幕を吸収する気持ちよさとか、ちゃんとショットを狙って撃つ気持ちよさとか、そういう要素を突き詰めた完成形。

IKDとZUNはSTGにどう弾幕を張ってきたか?

IKDとZUNはSTGにどう弾幕を張ってきたか?
——
ここで歴史的な対談ということもあり、IKDさんに『東方Project』シリーズをプレイしてもらいましょう!
ZUN
『東方妖々夢』だ。ちょうど21年前のゲームだ。ちょうど『ケツイ』が出た時のゲーム(笑)。
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IKD
しかもこれ、キーボードでプレイするという。(といいつつも巧みにプレイしてゆく) 普段の調整はパッドですか?
ZUN
パッドです。キーボードではやらないです。(画面を見ながら)懐かしいな~。
——
さて、ZUNさんが「大往生」と同じ時期に出したのが『東方紅魔郷』ですよね。
ZUN
Windowsで初めてのシリーズですね。特に勉強しなかったけど、作れるもんだね。
——
弾幕STGが拡大している時期でのリリースでしたよね。
ZUN
TAITO (タイトー) にいた頃にSTGを作るって話があったんです。で、企画を出したんです、ところが「STGは作りません」って返ってきて(笑)。もうフラストレーションだけが溜まる。
まりお
TAITO的になんでダメだったの?
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ZUN
上に「企画書出してくれ」って言われて、出したら「売れないからダメ」って(苦笑)。ただただ否定されるだけって。
まりお
「腹立つ」と。
ZUN
その時に出した企画が『東方紅魔郷』のように弾幕に名前を付けることでした。絶対いいと思ってました。コストもかからないし、盛り上がるから。
まりお
当時ZUNさんは「スペルカードシステムは僕の発明だ!」って言ってましたもんね。
IKD
(弾幕を避けながら)やっぱり商業で出したいって思っていたんですか?
ZUN
今でこそ、そんなにないですけど、当時は個人で作ったところで、その先もないと思ってましたしね。
だから自分の作ったSTGをゲーセンでやりたかったですね。なんなら今でもやりたい(笑)。
——
そしてIKDさんは2002年に「大往生」をリリースしていますよね。
IKD
「大往生」は本音を言うと「ちょっとやっちまった」タイトルで……。
——
えっ!?
IKD
バランス失敗したなっていう。自分が思ってた以上に難しいゲームで、
——
本当に大往生しちゃうゲームになってしまったと(笑)。
IKD
狙ってたわけじゃないですけど(笑)。当時も「思っていたより難しすぎた」っていう。
ZUN
「難しい」が売りにあの当時もなってましたし。
IKD
あまり言いたくないんですけど、「時間がない」、「ハードのスペックが弱い」ってふたつがとにかくきつくて。
でも私なりにできることはやったつもりだったんです。それでもリリースしてから自分で遊んでみたら「これちょっとな……」と思いましたしね。

「弾幕」の美とは何か?

「弾幕」の美とは何か?
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——
こうした代表作を持つおふたりに質問なんですが……弾幕の美しさってなんですかね? 人を引き付けるような美を、おふたりはどう作っているのかと。
IKD
難しいこと聞きますね(苦笑)。
ZUN
やっぱ弾幕に魅力を持たせたいと思ったら、戦闘機より生き物の方が演出しやすいと思ってて。シンプルに思うのは、たとえば弾幕の幾何学的な形を色や音楽で表現するのは確かに美しいです。
でも、美しいだけなら絵を見るのと一緒なんですよ。なんで弾幕が美しいかって言ったら、恐怖であったり、余裕であったり、ボスから出る感情と繋がるからプレイヤーに伝わるわけです。もしかしたら優しい弾幕だとか出せるわけです。
そういうのがただの見た目ではない。音楽と感情を合わせて表現できるものとして、他のゲームにはない表現方法なのかなと。
——
「東方」では様々なキャラがボスとして出ますけど、そうしたキャラの感情表現としての弾幕なんですね。
ZUN
そうですね。それと音楽を合わせています。突然、音楽を変える時にこういう弾を出すとか。弾幕とセットで表現させるための作品だから美しいと思ってます。
IKD
全部が連携してるっていうことですね。
ZUN
それが表面に一番出るのが弾幕なんです。
——
対照的にIKDさんの弾幕っていうのは、STGの競技性を追求する機能性が高い印象があります。
IKD
私は「避けていて楽しい」って作りから始まるので、弾幕の美しさは後からですね。
ZUN
それでも美しいですよ(笑)。
——
避ける楽しさを増幅させるために、弾幕のパターンを洗練させているというか。
IKD
最初に「これくらい弾を撃ったらいいんじゃない?」と作っていって、そこから形を整え、「もっと豊富にした方が、その見た目も美しいだろう」って流れですね。
弾幕の美しさだけを取ると、「なんか弾避けつまんねえな」って時があるんですよね。その場合、その美しさを捨てるんです。私は楽しい方向に舵を切るっていう。
——
爽快感っていうのがIKDさんの一番強い持ち味と感じますね。
まりお
ケイブシューは俺、全部気持ちいいと思ってて。道中から何から全部が爽快感で満ち溢れてる。
ZUN
だから好きなんですよ。あれは「東方」とは違うんですよ。
まりお
「東方」は道中はそんなでもないじゃん?
ZUN
あれはボスを表現するためだけにある(笑)。
——
ZUNさんはそう弾幕を作りますが、IKDさんがボスの弾幕作るとき、何を考えているのかが気になっています。
IKD
いや、何も考えてないんですよ。できあがってきたデザイン見て、「この一面のボスはボスとしてどうあるべきか」だけでしか作ってないんですよ。
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——
それは「弾幕STGとしてどうあるべきか?」ってことですか。
IKD
弾幕STGとしての難易度や、どれぐらいのボリュームがちょうどいいのかっていう。ゲームごとにノリがあるので、それを踏まえて作っているだけなんです。それは経験です。
——
ネタ切れはありましたか?
IKD
当然ありますよ。「作ってみたら前の奴に近いな」とか。何回作っても過去にやったものになったら、もう絶対こうしない選択肢を作り始めるんです。それを突破口にすることが多いです。
——
道中の設計はどう作っていますか。2003年の『ケツイ』から、ある種の流れがあるというか。
IKD
実はその背景のデザイナーが最初にバーってラフで描くんですよ。それを私が見て、脳内でSTGの完成形をイメージした後、お任せで敵をぜんぶ配置していく感じですね。
——
ケイブのSTGは自機の武装や技もあっさりしてましたね。「レーザーとボム」くらいしか言わないのは、こだわりがあるんですか。
IKD
「こだわりがなくて気にしてない」ですね。私は全部「TYPE A・B」になっちゃうので(笑)。
まりお
ケイブシューには弾に名前とかないじゃないですか。「5面ボスの第三形態の~!」みたいな。
IKD
ないですねえ。そもそも名前をつけるという発想がないので。
ZUN
ファンの中ではちょこちょこ名前がついてたんですよ。「洗濯機」とか。
まりお
「ふぐ刺し」とか! 勝手につけててね。あれ、IKDさんはどういう気持ちで見てたんですか?
IKD
「言われてみればそうだな」と。(あっさりと)

弾幕STGファンは「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」にいた

弾幕STGファンは「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」にいた
——
弾幕STGは人気を博していき、ケイブ作品もファンが同人誌を作るくらいのことがありました。IKDさんはそんなファンの動きをキャッチしていましたか?
IKD
そんなには……って感じです。もちろん「大往生」の頃よりも『虫姫さま』以降の方がお客さんが増えた印象はありました。
——
当時はケイブ祭りなどのイベントも始まってましたよね。そこでのファンの二次創作的な熱はありました?
IKD
あまり感じなかったですね。ケイブ祭りにいらっしゃるお客さんはSTG大好きな方々がほぼほぼメインなので。
やっぱりあの当時、ユーザーさんの情報を得られるのって2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)しかないんですよ、基本的に(笑)。
——
(笑)SNSもあまりなかったから、当時はゲーマーの生の声をそこで拾うんですね。
IKD
どんな罵詈雑言と言われて傷つこうが、見ざるを得ないんですよ。見るしか手がない。
ZUN
そんなのやめますよ、そりゃ(苦笑)。
IKD
傷ついてるマインド状態になってたらちょっと控えてましたからね。
——
逆にファンが支えてくれる大きさを感じた時ってありますか。
IKD
当時『ケツイ』が出ても、最初はあんまり盛り上がらなかったんですよね。実際、販売数も芳しくなくて。でもある時から「ケツイは最高だ!」って人が徐々に現れたんですよ。
ZUN
僕も覚えてる。僕も発売当時すぐ遊んでたんですけど、他に遊んでる人が誰もいない。なんでなんだろうなって。
まりお
俺、唯一持ってる基板が『ケツイ』なんですよ!
ZUN
移植されなかったからでしょ?
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まりお
そう!あの頃は基板を買うしかなくて! しかしIKDさん、2ちゃんねる見てたんですね。ケイブ総合スレとか。
IKD
見てましたね。
まりお
『ケツイ』の一面の道の曲に歌詞ついてたのか?とか。俺、歌ってアップしてたんですよ!
IKD
ああ、知ってます(笑)。
まりお
(突然歌い出し)さ~わ~や~か~風~が~吹~き~抜~け~るぅ~。
ZUN
誰が歌詞を作ったんだよ(笑)。
まりお
2ちゃんねるの人(笑)。俺のパソコンに歌が残ってるよ!
——
懐かしいインターネットの匂いがしてきました(苦笑)。あの頃の2ちゃんねるって大きかったんですね。
まりお
当時、2ちゃんねるで「東方」ってケイブファンから叩かれてたじゃん。
ZUN
叩かれてた。2ちゃんねるから追い出されたんです。
——
そんな事が!
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ZUN
いまだに2ちゃんでは「東方」が禁止です。みんな逃げて、したらば掲示板に行ってました。
まりお
あの頃、ケイブファンと「東方」ファンの争いがあったじゃないですか。IKDさんはどう見てました? 前に「あえて見ないようにしている」という話を聞いたことあるんですけど。
IKD
そうですね……「東方」自体の知名度がどんどん上がってきて、「ケイブのSTGとどうだこうだ」みたいな話があって。
私は「東方」のゲームを見ていなくて、ユーザーさんから「どっちが弾幕STGの元祖なんだ!」と。
ZUN
(笑)。
IKD
お互いがパクリパクられの話でしょっちゅう喧嘩してるわけですよ。 そこにその炎上のネタを増やしたくないわけですよ。
まりお
俺はどっちも好きだったから。ケイブシューターは「ああ!? 東方なんてよ!」って言ってたり。でもそういう人たちも『虫姫さま』で「レコたんレコたん」って言ってたり。
ZUN
変わらない(笑)。
まりお
「壁一枚取り払えば、すぐ仲良くなれるのに!!」ってずっと思ってましたね。
ZUN
ケイブシューが好きな人と、「東方」はそんなに仲が悪いわけじゃない。もっと硬派なシューターと仲が悪いんです。
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——
先ほどおっしゃられた「弾幕がSTGをダメにした」っていう方ですよね。
IKD
そんなとき、社内の誰かが「東方」シリーズのタイトルを買ってきて、「やってみたほうがいいんじゃないですか」って話があって。
——
それでIKDさんが「東方」をプレイしたと! さっきのプレイが達者だったのは、そういうことかと。
IKD
ボスと戦っている時に、相手の位置を示すマーカーがあるじゃないですか。「この気配りやばいな」と思いました。弾を見てなくてもボスに当たるように教えてくれるんだって。
まりお
確かに。
IKD
私も気配りみたいなところを結構気にするんですよ。「あ、これ方向性が近い人が作ってる」って可能性を感じたんですよ。その時に。
ZUN
あれは気配りというよりは、自分がプレイしていて「ボス見えねえよ」と(笑)。
まりお
ファンじゃなくて自分に対してのサービス精神だった(笑)。
——
その後にニコニコ動画の時代が来ますよね。僕も当時大学生の時、仲間うちで「鬼畜な弾幕ゲーあるよ」って見てましたし。
ZUN
ニコニコ動画のプレイ動画って何も味付けもしてないゲーム画面の垂れ流しなんです。それがね、大受けだったんですよ(笑)。
弾幕STGを見たことない人が「こんなにのすげえの?」っていう。難易度はノーマルですごくないんですけど、知らない人にそう見られてちょっと新鮮でしたね。
まりお
確かにそうかも。
ZUN
それがね、2000年代の後半ぐらいですかね。こっち側は弾幕STGをだいぶ遠くに進めていたつもりだったのに、STGやってない人はただ単に弾が多いことにみんな喜んでた。そこにもう一回引き戻された(笑)。

やがて訪れる弾幕STGの暗黒期

やがて訪れる弾幕STGの暗黒期
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——
しかし、2000年も終わりになるころにはアーケードが苦境に陥ります。そこを主戦場としていた当時はどう感じていましたか。
IKD
やっぱりアーケードでずっとやりたいっていうのがあったんで。斜陽だろうがなんとか出せるだけ出すっていうか、関係ないっていう感じですね。
要は会社としてビジネスって一応成り立っていれば、一応新たにこうIPが作られていくわけなので。会社がOKしてくれる限り、ずっとそこで勝負したいっていうのがありましたね。
——
コンソールをベースにしていく選択肢はありませんでしたか。
IKD
なかったですね。会社にも、私の中にもなかった。
まりお
やっぱりSTGってゲーセンの花形だったじゃないですか。ケイブはそれを残すんだって意思を勝手に俺は感じてますね。インベーダーゲームから始まったゲームセンターの主役っていう。
——
筐体がSTG用に最適化されてて、傾斜のついた画面まで全て計算されてる感覚はありましたね。
IKD
ある時にゲームセンターで、急に大画面を使った筐体が現れたので、あれがあったから弾幕STGと相性がいいっていうのもあると思うんですね。
ZUN
僕は結局一人でパソコンで作ってますけど、本当はあのでかい筐体で演出したかったんですよ。そっちの方がゲームがより良くなる。
——
IKDさんがこだわるアーケードの魅力ってどういうものなんですか。
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IKD
ゲームセンターの魅力って、言葉のないコミュニケーションみたいなのがあるじゃないですか。ギャラリーが集まったらなんか「何かすごいプレイが起こってるのかな?」って、あのリアルな一体感みたいな。
前の話ですが『ダライアス』をやってるプレイヤーさんがいて、難しいところでやり直すことになっていました。人がいっぱい観ているけど、みんな「これ無理じゃねえか」って思ったんですよね。
ところが、その人が最後にクリアしたんですよ。俺もみんな神経をすり減らしながらで見ていて、クリアした瞬間にギャラリーもみんな「やったー!」って言ってるんですよ(笑)。やっぱゲームセンターってこういうところだよなって思っちゃうんですよね。
まりお
ライブ感ですね。
ZUN
今だったら生配信でそういう一体感あると思うんです。でも、ゲーセンではもうすでにあったというか。配信機材も何もなくてもできていた。
——
やっぱり上手いプレイヤーの後ろで見るのが楽しかったですからね。
ZUN
上手い人も生まれつきじゃないから、努力してるんです。休みの日の早朝のゲーセンの開店直後とか、人がいない時にやってるんです。
そこで練習した後、人が多い時に、さも今来たかのようにすごいプレーを見せることをやってました。そういうことがね、本当に楽しかったです。
IKD
ゲームが下手くそな頃って誰も見ないわけですよ。そこそこうまくなってくると、ギャラリーがつくことがある。最初、そういう経験がないうちにギャラリーがつくとすごい緊張しちゃう。画面が暗転している時に、後ろにみんなの顔が映ったりするとすごくね。
——
アーケードゲームは「お金を入れて遊ぶ」ビジネスモデルが、そのままゲームデザイン全体に大きく影響しているのが特徴ですが、ゲーセンならではSTGの圧力を生み出したいのはありますか。
IKD
うーん、むしろゲームセンター用の難易度にしなきゃいけないのが、正直言うとアーケードゲームを作ってて唯一、嫌だなと思っていて。
——
あ、逆に負担だったと。
IKD
「それやったらこのレベル帯の人たちついて来れないから」ってわかってるわけですよ。でもインカムを取るためには絶対必要で、クリアできるかできないかのレベル帯にしないといけない。そういうゲームセンター用の難易度みたいなのがあって。
で、これをやるとユーザーが広がらないっていうジレンマがあって、ここだけがゲームセンターのゲームを作ってて、唯一いかんともしがたいところなんです。
ZUN
僕はそういうゲームが大好きで。やっぱりコンソールのゲームだと時間をかけたらクリアできるように作られてるじゃないですか。あれは達成感がないですよね。
だからあのころの僕のゲームは全部アーケード仕様。お金はかけてないけど、やっぱりゲームオーバーになったらもう一からやりなおし。だから、上手くなんないとクリアできない。
なんならゲーセンぐらいじゃないと、あの達成感を出せないんじゃないかっていう。百何回もコンティニューできるゲームではやっぱり面白くない。
やっぱりゲームを繰り返して上手くなるっていう体験をさせるんだったら、アーケードが最高なんですよ。アーケードっていうか、STGが最高(笑)。
まりお
あの達成感はなかなか他で味わえないですからね。

インディーゲームでジャンルを超えて引き継がれる、弾幕STGの子供たち

インディーゲームでジャンルを超えて引き継がれる、弾幕STGの子供たち
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——
いま弾幕STG自体は難しい状況かもしれないですけど、後の世代にその精神は受け継がれていると思うんですよね。RPGですけど、海外では『UNDERTALE』のトビー・フォックスなどに。
ZUN
僕も「東方」を作るとき、英語で弾幕って何て言うんだろうって辞書で調べると、「Curtain Fire」って。これそのまま弾幕だなと思って。
——
なるほど。
ZUN
そしたら向こうは「bullet hell」って言うんだよって教えてもらったんです(笑)。その名称はインディーゲーム側の発想だと思うんですけど。
——
その他に、同人で『Hellsinker.』の犬丼帝国や『アスタブリード』のえーでるわいすといった作り手、その影響が見られます。おふたりは後続への影響についてどう思いますか。
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▲『Hellsinker.』(画像はSteam: Hellsinker.より)
IKD
単純に言うと嬉しいです。ケイブがあんまりSTGを出せてないので、あんまり言える立場じゃないんですけど、やっぱり弾幕STGは途絶えて欲しくないわけですよ。
私たちがアーケードを作ってた時って、その熱心なユーザーさんから「ケイブがやめたらもうSTGは出てこないよ」なんておっしゃっていただいて嬉しかったんです。
ただ、「そんなわけないでしょ、STGは誰か作るでしょ」と思ってたんですよ。ところがあんまり出てこない(苦笑)。
ZUN
「そんなわけ」あった(笑)。
IKD
全体的に出てこない。途絶えてほしくないって意味では「てめえが作れ」っていう話なんですけど、インディーゲームがそういう思いがあるので作ってくれているのは純粋に嬉しいです。
僕らがずっと弾幕STGを作り続けているのも継承のためかなと思ってます。
ZUN
まあ、これしかないから……(笑)。
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いやいや(笑)。おふたりが作り続けることで、弾幕STGの遺伝子が続くといいですね。(了)
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90年代の末から、インターネットが隆盛する2000年代を駆け抜け、一時代を築いた弾幕STG。IKD氏とZUN氏による、お酒を飲みながらのお話には、その誕生から発展の歴史が凝縮されていた(そしてまりお氏のツッコミにも、当時の弾幕シューターならではの重みがあった)。
弾幕STGは、たしかに今でこそ完全新作がなかなか見当たりにくい状況である。しかし、インディーゲームや同人ゲームの方面にて、その遺伝子は脈々と生き続けている。
もしかしたらアクションかもしれないし、RPGかもしれない。STGではないジャンルの中でも「この弾の中を生き残れるわけがない」というくらい弾幕が画面を覆いつくしたとき、そこには『怒首領蜂』や『東方紅魔郷』、そして『バトルガレッガ』の血が流れているのである。